永住許可と帰化の違いを説明します。

日本で永住許可を取ることと帰化することの違いについて、基本的な差異を説明します。

「帰化」とは? What is Naturalization ?

国籍法という法律で、「日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によつて、日本の国籍を取得することができる。」とされています。

つまり、「帰化」という手続をとることによって、外国人は日本国籍を取得することです。

「帰化」とよく似た手続に「国籍取得」というものがあります。「国籍取得」は、認知、あるいは未成年の外国人の届出によって、外国人が日本国籍を取得するもので、「帰化」とは異なります。

「帰化」の要件とは?

「帰化」の許可権限は法務大臣にあります。永住権やその他の在留ビザと同じです。

国籍法は、帰化の条件を原則として次の通りと定めています。(この条件は、一般的には「普通帰化」と呼ばれています。「特別帰化」「大帰化」と呼ばれる特別な手続もありますが、ここでは論じません。)

  1. 引き続き5年以上日本に住所を有すること
  2. 20歳以上で日本の法律によつて行為能力を有すること
  3. 素行が善良であること
  4. 本人、または生計を一にする配偶者その他の親族の資産または技能によつて生計を営むことができること
  5. 国籍を有せず、または日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと
  6. 日本国憲法施行の日以後に、日本国憲法またはその下に成立した政府を暴力で破壊することを企てたり、主張したこと、或いはこれを企てたり、主張する政党などの団体を結成したり、加入したことがないこと

「永住許可」と似たような条件もあります。

1の連続居住要件が5年というのは、永住許可のガイドラインが10年以上の連続在留を条件としていることとのバランスがどうかは気になります。

3と4は「永住許可」と同じ様な条件です。

2の年齢と行為能力の要件は「永住許可」にはないものです。 

5と6は、「帰化」に特有の要件でしょうが、ある意味当たり前の条件と言えるかもしれません。

「永住許可」と「帰化」の違い

「永住許可」は外国人が国籍を変えずに、日本で期限なしで生活する許可で、「帰化」は外国人が日本国籍を得て、元々の国籍を失うこと、大きくはこの様に区別できるでしょう。

具体的にはどの様な差異があるのでしょうか?

日本国内の権利は?

帰化すれば、日本国民となる訳ですから、選挙権その他の公的な権利を含め日本国民として享受できる権利を有し、かつ行使できます。(国によっては、帰化や国籍取得後、一定期間または一定の世代、被選挙権を制限することもある様ですが、日本ではその様な制限はありません。)

永住者には、選挙権や被選挙権はありません。いわゆる「基本的人権」について、最高裁の判例では、「 基本的人権の保障は権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、我が国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に鑑みこれを認めることが相当でないと解されるものをのぞき、その保障に及ぶ。」としています。

ただし、これは永住者に限らず、在留外国人全般に及ぶものです。権利という面では、永住者も外国人であることにかわりなく、帰化した場合とは大きく異なります。

出身国での権利は?

国によっては、二重国籍を認めていて、日本で国籍を取得しても、出身国の国籍を喪失することとはされていない場合もあります。

とはいえ、日本は二重国籍を認めていません。帰化するには、上記の通り、元の国籍を失うことが条件となっているのです。

日本に帰化すれば、以降出身国では外国人と扱われることになるのです。帰国する場合にも、ビザの取得その他その国で定められた手続が必要となります。

一方、永住者は出身国では「自国民」であることに変わりなく、通常は、出身国に帰国するにも、滞在するにも特段の制約はないものと考えます。

名前やパスポート

帰化すれば、戸籍が作成されます。新しい名前を持つことになります。

戸籍に使用できる文字は、漢字・ひらがな・カタカナです。アルファベットは使えません。

元々漢字名をもっておられた場合には、同じ名前を戸籍上の表記とできますが(漢字によっては使えないものもあります)、元々の名前の表記がアルファベットなどであれば、新たな名前をつけたり、カタカナ表記にする必要があります。

帰化すれば、当然日本のパスポートを取得できます。

永住権では、これらは何れも対象とはなりません。

誰が申請できるのか?

「帰化」は、日本に帰化しようとする外国人が申請できます。15歳以上であれば、本人が申請できますが、15歳未満の場合は、親権者などの法定代理人が申請することとされています。

「永住許可」は、既に他のビザをもって日本で生活する在留外国人がビザに変更として申請するものです。また出生によりその取得を申請することも出来ます。

「帰化」と異なり、年齢での制限はありません。親権者などの法定代理人が申請することもできます。

どこに申請するのか?

「帰化」の申請は、申請者に住所地を管轄する法務局または地方法務局に対して行います。

「永住許可」申請は、住居地を管轄する出入国在留管理局などの地方出入国管理官署に対して行います。

帰化と永住許可、どちらを選ぶべき

メリット・デメリット、リスクは?

「帰化」と「永住許可」、メリットを比べれば「帰化」の方が大きいと言えるかもしれません。権利に制限はないからです。但し、職業選択や在留期間で永住権には制約はないので、どこまで不自由と感じるかは人ぞれぞれかもしれません。

デメリットはどうでしょう。日本国内で負担する義務という面では、対して差はないかもしれません。それぞれ納税の義務や社会保険の負担を負うことに変わりはありません。

現在の日本では、国民となっても兵役などの負担がある訳ではありません。

なんといっても、帰化については、元の国籍を失うことが大きなデメリットです。

「永住許可」の方は、そもそも日本に住む外国人が在留資格の変更を申請するという制度からは、新たにデメリットが生じるものではものでないと言えます。納税や社会保険の負担は既に負っている訳ですから。

ただし、デメリットではないのですが、永住権には事後的に取り消されるリスクがあります。もちろん健全な生活を過ごしていていきなり取り消されるころはないのですが、例えば1年以内の予定で、帰国したところ疾病などの理由で日本に1年以内に戻れなかった場合に、再入国許可を得ていなけければ、永住権を取り消されるリスクがあるのです。

帰化すれば、更に別の国の国籍を取得する様なことをしなければ、国籍を失うことは通常はありません。地位を失うリスクとしては、帰化にのが少ないと言えるでしょう。

当事務所の考えは?

帰化にしろ、永住権取得にせよ、既に日本に住んでいる外国人が選択することを前提と考えるなら、「永住許可」で十分なのではないでしょうか。

敢えて、出身国の国籍を捨ててまで、帰化する必要性は通常は大きくはないということです。

帰化を選択する方がよいと考えられるのは、以下の様な場合かと推測します。

  • 日本国籍がないと就くことができない職業への転職を希望していること
  • 出身国で政治的抑圧を受けているなどの理由で、その国籍を喪失してでも日本国籍を取得するメリットがあること
  • 出身国の税制上、国籍喪失が有利であること(日本の税制も、それ程有利とは言えないので、その点も比較して見る必要があります。)

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