フリーランサー、Self-Employedのための就労ビザ

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いわゆる個人事業主や自由業といえば、かつては小売店の経営者や医師・弁護士がその代表でした。現在では、より幅広い職種の方がこのカテゴリーに属するとされます。

特定の会社や団体に所属せずに、独立してその職務に従事する人々のことを、現在ではフリーランス・フリーランサー、Self Employedなどと呼んでいます。

COVID-19の影響で、いわゆるテレワークが浸透しつつあることから、今後職業としてフリーランスを選択する人は増えていく可能性があります。

日本での生活を希望される外国の方から、フリーランスを職業とする就労ビザの取得の可否の相談がしばしばあります。

より具体的には、「現在の就労ビザで、フリーランサー、Self-Employedとして、在留期間更新許可を得られるのか?」、「フリーランサー、Self-employedとして日本で働くための就労ビザに変更できるか?」という質問を受けることが数多くあります。

あるいは、端的に、「フリーランサー或いはSelf-Employedとしての就労ビザ」に変更したいとのご相談を受けることもあります。

果たして、フリーランス・フリーランサー、Self-Employed を職業として、就労ビザの更新や変更の許可を得ることはできるのでしょうか?

フリーランス、Self-Employed で働くための在留ビザ問題は何なのか?

日本で外国人が生活するために必要な在留ビザは、大きく「居住」ビザと「活動」ビザに分けることが出来ます。

前者は、対象者の身分や地位に基づくもので、いわゆる「配偶者」ビザなどがその例です。永住者もこれに入れられるでしょう。

「居住」ビザをもつ外国人は、就業の制限がなく、原則として職業を自由に選択できるので、フリーランス、Self-Employed として生計を立てたり、収入を得ること自体に制限はありません。配偶者ビザなどの「居住」ビザをもっていれば、フリーランス、Self-Employedとして働くことの問題はない訳です。

後者の「活動」ビザは、日本での活動=職業や就学などに従事する目的で認められるビザです。その中心は「就労」ビザです。

「就労」ビザは、職業の種類別、正確には、「日本で行うことが出来る活動」毎に、約20種類に分類されています。「就労」ビザをもって日本で生活する外国人は、許可されたビザごとに認められた活動または職業を選ぶことのみが認められる訳です。

そして、それらの多くは、会社その他の組織・団体に雇用されたり、所属することを前提としています。具体的には、「就労」ビザの大半が、日本の会社その他の機関と雇用契約などの契約を結んで働くか、あるいはそれらを活動場所と定めた上で働くことが前提とされているのです。

このことが、いわゆる、フリーランス、Self Employed を職業として「就労」ビザの更新や変更の申請をし、許可を得るための大きなハードルとなっていると言えるでしょう。

「技術・人文知識・国際業務」の資格で、フリーランス、Self Employed として働けるのか?

「就労」ビザのうち、許可を得た人数が最も多いものは、近年大きく増加した「技能実習」を除けば、「技術・人文知識・国際業務」です。

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で行える活動は、入管法では次の様に規定されています。少し長くなりますが、そのまま引用します。

「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」

「本邦の公私の機関との契約」が前提とされていますが、ここでいう契約とは、日本での最長で5年の滞在の条件である訳ですから、継続的な業務への従事を要求されるものと考えてよいでしょう。

具体的には、雇用契約が想定されます。実際には、雇用契約を結んで、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を得ている人がかなり多いものと思います。

それ以外では、どの様な契約が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を得るための前提として認められるのでしょうか?

入管法や関連法令で明示されている訳ではありませんが、出入国在留管理庁の制定する在留資格申請に関する申請書のフォーマットでは、「雇用、委任、請負、その他」から選択し、その他を選択した場合、具体的に如何なる契約かを明示する必要とされています。

このことから、「技術・人文知識・国際業務」の許可を得るために必要な契約は、雇用契約が一般的で、それ以外では委任契約か、請負契約が一般的でありうる、ということになります。

フリーランスやSelf-Employedで働くと言う場合、雇用契約なしに働くことを通常は意味するものと考えます。その上で、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を許可されるには、何れかの日本の会社や組織と委任契約か請負契約を結んで、一定期間の日本滞在が必要ということが、条件となるでしょう。

逆に、不特定多数の取引先とスポットの短期の契約を結ぶ様な仕事を想定していては、「技術・人文知識・国際業務」の許可を得ることは普通に考えて難しいでしょう。

何れかの企業と一定期間の委任契約を結んで仕事をする様な場合は、対象となりえます。但し、複数の企業と委任契約を結ぶ様な場合には、在留資格の変更や更新の許可を得ることはかなり難易度が高いと考えておいた方がよいでしょう。前述の申請書のフォーマットは1社との契約締結を前提としているからです。

少なくとも、例えば複数の会社と中長期の委任契約を結んで在留資格の変更や更新の申請を行うには、それぞれからの申請書と必要書類を提出する必要があり、これを怠った場合には、たとえ変更や更新の許可を得られたとしても、提出しなかった会社との仕事・活動は違法なものと言えるでしょう。

「契約」が条件とならない「就労」ビザは?

それでは、日本の会社や団体などとの雇用、委任その他契約を結ばずに得られる「就労」ビザはないのでしょうか?

入管法の規定において、日本の会社・団体との契約を前提としていない「就労」ビザは次の通りです。

「芸術」「高度専門職1号ハ」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「興行」

これらのうち、「興行」は、日本の興行主との契約に関する書類などの提出が必要とされるので、完全に独立して事業を行えるものではありません。

「法律・会計業務」「医療」は、弁護士や会計士、医師や歯科医師といった資格を前提とするもので、一般的な「フリーランス」のためのビザとは言い難いものです。

「芸術」も音楽・美術・文学などの活動で収入を得るためのビザであり、一般的ではなく、特殊なものと言えます。

広く、一般的な産業分野での活動を対象とする、雇用契約などの長期契約締結を必要としない「就労」ビザは、「経営・管理」ビザ(もしくは、「高度専門職1号ハ」)ということになるでしょう。

「経営・管理」ビザの許可の条件とは?

「経営・管理」ビザは、取得が難しいビザとされます。

他の多くの「就労」ビザが、雇用先との雇用契約によって、将来の収入を証明できるのに対して、販売予定先などを含めた、実現可能性のある事業計画書を準備して、将来の収入を証明しなければならないからです。

事務所を確保する必要もあります。実際の業務はラップトップ1台だけで可能でも、物理的オフィスが許可の条件の1つとされるのです。そして、自宅兼用オフィスでは許可が得られないケースが多く、賃貸オフィスを借りることが一つの条件となっています。

この点は、フリーランスやSelf-Employedを指向する人には、余計な負担となるかもしれません。

更に、一定の事業規模を示す必要があります。それには次の2つの何れかが必要とされます。

  • 5百万円以上の資本金または出資金
  • 2人以上の常勤職員

フリーランスとして事業を開始する場合、直ぐに従業員を雇用することは多くはないでしょうから、5百万円以上の資本金または出資金を準備することが通常でしょう。

具体的には、5百万円以上の資本金の会社、株式会社のもしくは合同会社を設立してビザ申請を行うこととが、実際上必要といえます。

5百万円を準備することが、フリーランスとして就労ビザを取るための、一つの大きな関門と言えます。但し、次の2点も考慮しておくことができます。

  1. 資本金は必ずしも、ビザ申請者が単独で準備する必要はないこと(共同経営者として、申請することも出来るのです。)
  2. 一旦拠出された資本金も、ビザ申請者への報酬も含めた会社経費として、将来的には支出していくことが出来ること

「外国人創業人材受入促進事業」とは?

「経営・管理」ビザの取得には、上述の通り、資金の調達、会社を設立したり、販売先・顧客を確保したり、事務所を確保したり、相応の準備が必要です。

外国の人が、ビザ申請に先立って、これら全ての準備を行うことはかなり難しいと言えます。

そこで、「国家戦略特別区域」制度を利用して、東京都において認められた制度が、「外国人創業人材受入促進事業」です。

具体的には、以下の流れで、「経営・管理」ビザの取得を目指すことができます。

  1. 「事業計画」などを作成し、東京都の「確認」を受ける。
  2. 東京都の「確認」を下に、東京出入国在留管理局で6ヶ月の創業準備活動のための「経営・管理」ビザの許可を受ける。
  3. 6ヶ月の創業準備活動の期間に、資金調達、顧客・販売先の確保、会社設立、事務所確保などの創業準備を行う。
  4. 創業準備を完了後、「経営・管理」ビザの更新を受ける。

制度の概要は、該当のサイトで確認できます。

なお、この制度は、新規にビザを取得される方が対象です。既に他のビザで日本で生活される方が、ビザを「経営・管理」に変更することを希望する場合には利用できないので注意して下さい。(最近、「留学」からにの変更については、例外的に認められる様になりました。)

最後に

就労ビザの許可を得てで働く方が、フリーランスやSelf-Employedでの仕事に「転職」する場合には、多くの場合、その職務に見合った適正な就労ビザへの変更の許可を得てから行う必要があります。

もし、その様な手続を怠って、フリーランスやSelf-Employedとしての事業を開始してしまっては、最悪の場合ビザが取り消されるおそれがあります。

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