統計から見た「就労ビザ」取得方法

外国の方が海外から日本に来て仕事をする場合、「働けない」ビザをもって日本に住んでいる方が仕事をする場合、原則として「就労ビザ」を取る必要があります。(日本におられる場合には「資格外活動許可」を取ることもできます。)

就労ビザをもって日本で生活する外国の方は、平成30年6月段階で61万人を超えています(「外交」「公用」ビザを除きます)。この数字は、平成26年末からの3年半の間に60%以上も増えています。

就労ビザは、最新の「特定技能」も含めて、大別して20種類あります。「高度専門職」「特定技能」の様に更に複数に分けることができるビザもあるので、これらを区別すれば、29種類になります。

就労ビザ取得を成功させるために、就労ビザの種類選択を適切に行う必要があることは言うまでもありません。そのためには、それぞれのビザがどんな職業の方を対象とするのか?どんな条件であれば取得が許可されるのか?どんな準備をする必要があるのか?などを理解する必要があります。

まずは、就労ビザ取得のための「必要条件」を確認すること

就労ビザは、それぞれ申請時に一定の条件を備えていなければ、許可されません。誰しもが取得のチャンスがある、くじ引きの様なものではないのです。(これは就労ビザだけでなく、全てのビザに共通です。)

入管法は、個々の就労ビザごとに、日本で行うことができる「活動」=仕事の内容を規定しています。就労ビザを申請する場合、申請対象の就労ビザごとに規定されている仕事を行う意思があるだけでなく、実際日本でその仕事を行う能力や可能性があることを明らかにしなければ、許可は受けられません。

つまり、就労ビザを申請する場合、対象の就労ビザごとに一定の必要条件を備えていることが必要なのです。

外国の政府・機関・企業・団体の派遣を必要とする就労ビザ

いくつかの就労ビザは、外国政府、外国機関や外国企業から派遣される方を対象としています。「派遣」されることが必要条件となる就労ビザです。誰しもがその取得をトライする訳にはいかないビザと言えるでしょう。

具体的には次の就労ビザです。

  • 「外交」・・・外国政府の派遣する在日大使館・公館・領事館などの構成員、いわゆる外交官とその家族が対象です。
  • 「公用」・・・外交官ではありませんが、在日大使館・公館・領事館などで公務につく方とその家族が対象です。
  • 「宗教」・・・外国の宗教団体から日本に派遣された宗教家が対象です。
  • 「報道」・・・外国の報道機関との雇用契約などの契約に基づき日本で取材などを行う報道に関する職業に就く方が対象です。
  • 「企業内転勤」・・・外国の事業所の職員が日本の事業所に転勤する場合が対象となります。

仕事をする日本国内の企業・機関・団体が決定していることを必要とするビザ

日本国内の公的機関・団体や民間企業・団体と雇用契約を締結するなど仕事を行う企業・機関・団体などの存在が仕事の内容として決められている就労ビザがあります。必ずしも雇用契約ではなく、請負契約や委任契約でもよい場合もありますが、典型的には雇用契約ということになります。

具体的には、「高度専門職1号(イ)」「高度専門職1号(ロ)」「高度専門職1号(ハ)」「研究」「技術・人文知識・国際業務」「介護」「技能」「特定技能1号」「特定技能2号」「技能実習1号(イ)」「技能実習1号(ロ)」「技能実習2号(イ)」「技能実習2号(ロ)」「技能実習3号(イ)」「技能実習3号(ロ)」の15種です。

このうち、新設の「特定技能1号」「特定技能2号」については、入管法では「法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用に関する契約」が必要とされています。契約の相手先は法務大臣が指定する機関である筆いうがあり、契約の種類も雇用契約に限られています。(とりあえず、勤め先を探せばいいのではないことになります。)

「技能実習1号(イ)」「技能実習1号(ロ)」「技能実習2号(イ)」
「技能実習2号(ロ)」「技能実習3号(イ)」「技能実習3号(ロ)」は、いわゆる「技能実習法」という法律に従って、受入れ企業などが対象の技能実習生ごとに「技能実施計画」を策定し、認定を受けることがビザ申請には必要です。やはり受入れ先企業などが決定していることが必要なのです。

「高度専門職1号(イ)」「高度専門職1号(ロ)」は、「法務大臣の指定する本邦の公私の機関との契約」に基づく研究、もしくは科学知識や技能必要とする職につくことができます。「高度専門職1号(ハ)」は「法務大臣の指定する本邦の公私の機関」で、貿易などの事業運営を行ったり、管理職につくことができます。雇用契約などが全てに必要な訳ではありませんが、少なくともビザを申請するために企業・機関・団体が決定していることが必要です。

それ以外の以下のビザは、入管法の規定では「本邦の公私の機関との契約」に基づいて活動=仕事を行うことがビザの申請には必要とされています。

  • 「研究」・・・雇用契約などに基づいて、研究に関する仕事を行うことができます。
  • 「技術・人文知識・国際業務」・・・雇用契約などに基づいて、人文・社会・自然科学それぞれの分野の技術や知識を必要とする仕事を行うこと、或いは、外国文化に根差した思考や感覚を必要とする仕事(翻訳、通訳、語学指導、商品開発、海外取引などです)を行うことができます。
  • 「介護」・・・雇用契約などに基づいて、介護福祉士の資格をもって介護や介護指導の仕事ができます。
  • 「技能」・・・雇用契約などに基づいて、「産業上の特殊分野」(エスニック料理、外国特有の土木建築・製造物、石油探査、スポーツ指導、ソムリエなど限定的です)での熟練技能を必要とする仕事ができます。

仕事をする日本国内の企業・機関・団体の決定を必要としない就労ビザ

日本で仕事をする企業・機関・団体などが決まっていることが、ビザの定める仕事の内容とはなっていない就労ビザがあります。次の通りです。

  • 「教授」・・・日本国内の大学、それに準じる機関または高等専門学校において、研究、研究の指導、または教育をする仕事につくことができます。
  • 「経営・管理」・・・日本国内で貿易などの事業の運営を行ったり、管理職に就くことができます。
  • 「法律・会計業務」・・・外国法事務弁護士、外国公認会計士などの資格を要する法律または会計の職に就くことができます。
  • 「医療」・・・医師、歯科医師など資格を要する医療関係の職に就くことができます。
  • 「教育」・・・日本国内の小学校、中学校、高等学校、義務教育学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校、各種学校などでの教員の職に就くことができます。
  • 「興行」・・・演劇、演芸、演奏、スポーツなどの興行、その他の芸能活動を行うことができます。

就労ビザ申請前に雇用先・所属先の決定は必要か?不要か?

就労ビザの申請のための「必要条件」から、28種類の就労ビザを大きく次の3つに分類しました。

  1. 外国の政府・機関・企業・団体からの「派遣」が必要な就労ビザ
  2. 日本国内で仕事をする企業・機関・団体が決定していることが必要な就労ビザ
  3. 日本国内で仕事をする企業・機関・団体が決定している必要がない就労ビザ

1の「派遣」型就労ビザは、申請できる方が、限定されています。「狙ってとれる」ビザとは言えません。ここでは選択対象から外して考えた方が適切でしょう。

2の「所属決定」型ビザは、ビザをもって行うことができる仕事の内容自体において、雇用先や所属先の決定を前提としている訳ですから、申請時に雇用先や所属先が決定している必要があることは言うまでもありません。

3の「所属非決定」型ビザは、ビザをもって行うことができる仕事内容において、雇用先や所属先の決定を前提としていません。

それでは、雇用先や所属先を決めないままで3の「所属非決定」型ビザを申請して果たして首尾よく許可を得ることが可能なのでしょうか?

申請に必要な書類や許可条件=上陸許可基準などを見ると、3の「所属非決定」型ビザの多くにおいても、雇用先、所属先があることが必要もしくは望ましいものであると見ることができます。

例えば、3の「所属先非決定」型ビザの、「経営・管理」「教授」「法律・会計業務」「教育」「興行」の全てについて、ビザ申請書に「活動の内容、期間、地位、報酬を証する文書」を添付することが必要とされます。これに該当する文書は典型的には雇用契約であると考えられます。逆に雇用先などの所属先が決定することなしに、この文書を準備することは簡単ではありません。

また、上陸許可基準を見てみると、「経営・管理」の経営者に当たる場合、「法律・会計業務」「興行」の一定の場合を除き、「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」が許可の基準とされています。この基準をクリアすることを明らかにするには、やはり具体的な雇用契約などを締結した上で申請しなければ、簡単ではありません。

こうしてみると、3の「所属先非決定」型ビザについても、その多くは事前に日本国内の企業や団体と雇用契約などを締結した上で、申請するのでなければ、結局許可を得られないおそれが強いと言えるのです。

事実上、雇用契約などを事前に締結し、雇用先や所属先を決めることなく、申請できる就労ビザは、「経営・管理」ビザだけ、それも企業などの経営を行う対象がその事業内容も含めて定まっている場合だけなのです。

やはり、

確実に就労ビザを取得するためには、「申請前に雇用先・所属先は決定しておく必要がある」

ということになります。

どの就労ビザを申請すればよいか?

外国の方が日本での仕事を希望する場合、雇用先や所属先などを見つけることが目的であり、就労ビザはあくまで手段に過ぎないと言うことができます。とはいえ、配偶者や永住者などの「居住資格」ビザをのもっていなければ、外国の方は原則、就労ビザなしに日本では仕事ができません。

家族を養うため、その他様々な理由で日本での就業を必要とする外国の方にとっては、まずは、どの就労ビザであれば取得可能かを検討する必要がある場合もあるでしょう。

どの就労ビザなら、取得できるか見極めた上で、雇用先を見つけることが必要となります。

どの就労ビザなら取得可能性があるのか?

まずは自分の学歴、職歴、保有資格などから、どの就労ビザの取得が可能かを検証する必要があります。

資格があるなら

最も明確に就労ビザの対象を絞りやすいのは、特定の資格を持つ場合です。有資格者であれば該当ビザを対象とするべきです。資格については日本国内で業務が行えるものでなければなりません。これに対応する就労ビザは次の通りです。

  • 「法律・会計業務」・・・外国法事務弁護士、外国公認会計士の他、弁護士、公認会計士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、弁理士、行政書士などが対象です。
  • 「医療」・・・医師、歯科医師、薬剤師、看護師などが対象です。
  • 「介護」・・・社会福祉士などが対象です。

実際には、これらの就労ビザの保有者は現状ではそれほど多くはありません。平成30年6月末段階で、「医療」ビザ保有者は約2千人、介護は約180人、「法律・会計業務」は150人ほどです。(「医療」「介護」は高い増加傾向にはあります。)

大学を出ていれば

現在、就労ビザで最も多くの人がもっているものの一つとされるビザが、「技術・人文知識・国際業務」とされています。

このビザの「技術・人文知識」の部分にあたる人文・社会・自然科学の知識・技能を要する仕事については、大学を卒業して、大学の専攻科目と仕事で必要とする知識や技術が一般的な関連性をもっていれば、ビザ取得の条件を充たすことができるとされるからです。実務経験年数は必要とされません。

また、このビザの「国際業務」の部分にあたる仕事については、通常3年以上の実務経験を必要とするのですが、母国語の翻訳・通訳・語学指導を行う場合には、大学を出ていれば実務経験は必要とされません。

もし、大学を出ているのであれば、大学の専攻科目に関連する仕事、もしくは母国語の翻訳・通訳・語学指導の職を見つけることがビザ取得の近道です。

「技術・人文知識・国際業務」ビザをもって日本に在留する数は、平成30年6月末で21万人を超えており、近年の増加傾向も高いものがあります。

母国と関連する企業に勤める場合

「技術・人文知識・国際業務」のビザの「国際業務」の部分の対象は、外国文化に根差した感性や思考を要する仕事とされます。その具体内容は、「翻訳・通訳・語学指導」の他、「広報・宣伝・海外取引業務・商品開発」など幅広い業務を対象としています。母国の資本が入った企業や母国との取引を主たる事業とする会社で母国の言語を要求される仕事であれば、これに該当することも十分ありうるでしょう。

その場合大学を卒業している必要はありませんが、実務経験3年以上が条件となります。

学校の先生になるには

小学校、中学校、高等学校の先生から大学の教授まで、ビザの許可条件はそれほど厳しいものではありません。とはいえ、採用されること自体が外国の方にとっては難しいものと言えます。

実際に、平成30年6月末の「教授」ビザでの在留者数は約7千人、「教育」ビザでの在留者数は1万2千人ほどで、近年それほど増加しているものではありません。

数字に表れている訳ではありませんが、比較的採用されやすく、ビザの許可基準が相対的に厳しくないものとして、語学教育を目的とした各種学校で外国語教育にあたる教員をあげることができます。

「上陸許可基準」では、「日本人と同等額以上の報酬を得ること」以外は教科となる外国語で12年以上教育を受けてきたことだけです。実務経験年数が条件とはなっていません。

日本において、母国語の教育が教科としてのニーズがあるのならば、目標としやすい職業であるかもしれません。

「腕に職」があれば

「技能」ビザは、「産業上の特殊な分野」での熟練技能者に与えられるとするビザです。「上陸許可基準」から見ると、具体的に如何なる職業が対象とされているか明確です。

「外国料理の料理人」「外国特有の土木建築」「外国特有の製造・修理」「
宝石・貴金属・毛皮の加工」「競走馬などの調教師」「石油探査など」「パイロット」「スポーツ指導者」「ソムリエ」です。

それらの大半は、多くの人が対象とはなり難いものと考えられますが、以下については、対象となる可能性があるかもしれません

  • 母国で、シェフや料理人として10年以上の実務経験がある場合、日本のおける「母国料理」のシェフや料理人として、「技能」ビザの対象となる可能性があります。
  • 宝石、貴金属または毛皮の加工に関して10年以上の実務経験があれば、「技能」ビザの対象となる可能性があります。

※ 「技能」ビザの対象で、汎用性のある職種は、料理人、土木・建築、製造・修理、宝石・貴金属・毛皮の加工ですが、この内「外国」の制約がないのが、「宝石・貴金属・毛皮の加工」です。

「技能」ビザをもつ在留者数も、分野が限定されているにもかかわらず、少ないものではありません。平成30年6月末で4万人近くに上ります。

専門性・熟練技能がない場合

日本の就労ビザの大半は、専門的知識や熟練した技能をもつ人を対象とするものでした。

非熟練就労者を対象とした就労ビザが「技能実習」ビザです。

「上陸許可基準」でも、申請者=就労者の学歴や職歴などの条件はありません。条件は、いわゆる技能実習法に基づいて作成された「技能実習計画」が主務大臣の認定を受けているか否かとされます。

「技能実習計画」は、「技能実習生」を受け入れる企業もしくは監理団体といわれる企業団体が作成することとされていますが、実際には大半は監理団体によるものです。監理団体は、「技能実習生」の「送出国」の「送出し機関」から「技能実習生」を受け入れており、個別に日本国内で応募することは想定されていません。

全部で6種ある「技能実習」ビザをもつ在留者数は、平成30年6月末で、約28万6千人に上り、「技術・人文知識・国際業務」をもつ在留者の数を上回っています。

新しい「就労ビザ」とは?

平成31年4月の入管法改正で誕生した就労ビザが、「特定技能1号」と「特定技能2号」です。

とくに「特定技能1号」は、専門的知識や熟練技能を必要とする分野を対象とする従来の就労ビザと非熟練就労者を対象とする「技能実習」の中間的な分野、「半熟練」の労働者を対象とするものとして注目されています。

「特定技能1号」ビザは、「技能実習」ビザと異なり、日本国内で生活する在留外国人の取得も可能とする制度設計の下に制定されています。

とはいえ、「特定技能1号」ビザを申請するには、原則「日本語試験」と「技能試験」にパスする必要があります。

そこで注目すべきは、「技能実習2号」を修了した場合、それらの試験を免除されることです。「技能実習2号」修了者は「特定技能1号」の受入機関に直接応募することができる訳です。

まとめ

「就労ビザ」をとるには、原則として雇用先や所属先を見つけることから始める必要があります。

但し、闇雲に応募しても「就労ビザ」取得には結びつきません。自らの学歴や職歴に照らして、取得可能性のあるビザを想定して雇用先などを見つけなければなりません。

学歴や職歴がなくても、就労ビザ取得の方法がない訳ではありません。「技能実習」や新しい「特定技能」がその場合の対象となります。

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