永住許可の継続在留期間緩和要件、「我が国への貢献」とは?

在留期間緩和要件とは?

永住許可を取得するには、いくつかの条件をクリアした上で、法務大臣の許可を得る必要があります。

条件には、様々なものがありますが、最も重要なものの一つが「継続在留期間」についての要件です。

具体的には、法務省の定めた永住許可のガイドラインで「継続して10年以上日本に在留し、そのうち5年以上は「就業資格」ビザもしくは「居住資格」ビザをもって在留する」こととされます。

永住許可のガイドラインは、合わせて、「継続在留期間」が緩和されるいくつかのケースも定めています。

例えば、日本人や永住者の配偶者や子である場合、「定住者」ビザや「高度専門職」ビザをもつ場合などです。

「我が国への貢献」による緩和

「継続在留期間」の要件を緩和するケースとして、「我が国への貢献」というものが永住許可のガイドラインに定められています。

具体的には、「外交、社会、経済、文化などの分野で『我が国への貢献』があると認められる場合、5年以上日本に在留していること」とされています。

期間が5年に短縮されているだけでなく、「継続」の文言も付けられていません。

一方で、「我が国への貢献」が具体的に何をさすのか、直ぐには理解、解釈が難しいとも言えます。

法務省は、「我が国への貢献」とは何を指すのかについても別にガイドラインを制定しています。

「我が国への貢献」ガイドラインとは?

次の何れかに該当し、5年以上日本で社会生活上の問題なく滞在してきたこととされます。

1.各分野共通

  • 国際機関、外国政府、これらに準じる機関から、国際社会で権威ある賞を受賞した者・・・ノーベル賞、フィールズ賞、プリツカー賞、レジオンドヌール勲章など
  • 日本政府から次の様な勲章を受けた者・・・国民栄誉賞、勲章、文化勲章、褒章(紺綬褒章・遺族追賞除く)、日本国際賞
  • 日本政府、地方自治体から委員などに任命・委嘱され、公共の利益を目的とする活動をおよそ3年以上行った者
  • 医療・教育などの職業について、日本社会・地域社会の維持・発展に多大な貢献のあった者

2.外交分野

  • 外交使節団・領事機関の構成員として日本で勤務し、日本と該当国との友好・文化交流の増進に貢献のあった者
  • 日本が加盟する国際機関の事務局長、同次長、これらと同等以上の役職での勤務経歴を有する者

3.経済・産業分野

  • 上場企業・それと同規模の日本企業の経営におよそ3年以上、携わっているか、携わったことがあり、日本経済または産業の発展に貢献した者
  • 日本企業の経営におよそ3年以上携わったことがあり、1億円以上の投資を行うことにより、日本経済または産業の発展に貢献した者
  • 上場企業・それと同規模の日本企業の管理職またはそれに準じる職におよそ5年以上勤務しており、その間に日本経済または産業の発展に貢献した者
  • 日本の産業の発展に貢献し、全国規模での選抜の賞を受けた者・・・グッドデザイン賞大賞・特別賞など
  • 先端技術者、高度技術者として活動し、日本の農林水産業、工業、商業その他産業の発展に多大な貢献があった者
  • IoT、再生医療などの「成長分野」の発展のための所管官庁が関与するプロジェクトにおよそ5年以上携わっており、その間に日本経済または産業の発展に貢献した者

4.文化・芸術分野

  • 文学、美術、映画、音楽、演劇、演芸などの一般的に権威あるものと評価される賞の受賞者・・・ベネチア・ビエンナーレ金獅子賞、高松宮殿下記念世界文化賞、アカデミー各賞、カンヌ映画祭各賞、ベネチア映画祭各賞、ベルリン映画祭各賞
  • 文学、美術、映画、音楽、演劇、演芸などの指導者または指導的地位にある者として、およそ3年以上日本で活動し、日本文化向上に貢献あった者

5.教育分野

  • 日本の大学またはこれに準じる機関の、常勤これに準じる勤務実体の教授、准教授または講師として、およそ3年以上、教育に当たってきている、または当たったことのある者で、日本の高等教育の水準向上に貢献のあった者

6.研究分野

研究活動により顕著な成果を上げた次の者

  • 研究成果である論文などが学術雑誌などに掲載され、さらにそれらの論文などが複数引用されている者
  • 研究成果である論文などが、公平な審査過程を経て掲載される学術雑誌などに複数回掲載されたことのある者
  • 研究成果である論文などが、権威ある学術雑誌などに多数掲載されている者
  • 一般的に権威のあると評価される学会で、高い評価を受け講演したことがある者

7.スポーツ分野

  • オリンピック、世界選手権などの世界規模の著名スポーツ競技会などでの上位入賞者、またはその監督、指導者として入賞に多大な貢献があった者で、日本でそのスポーツの指導や振興に関する活動を行っている者
  • 国際的規模のスポーツ競技会などの上位入賞者、またはその監督、指導者として入賞に多大な貢献があった者で、およそ3年以上日本でそのスポーツの指導や振興に関する活動を行っている者
  • 日本でのスポーツなどの振興に多大な貢献があった者

8.その他の分野

  • 社会・福祉分野で、日本社会の発展に貢献し、全国規模選抜の賞を受けた者・・・ワンモアライフ勤労者ボランティア賞、社会貢献者を表彰する各賞
  • 日本での公益活動を通じて、日本の社会・福祉に多大な貢献のあった者

ガイドラインのどこに注目?

「我が国への貢献」ガイドラインは日本社会の幅広い分野での様々な業績、成果に応じて、「貢献」を認め、「継続在留期間」の緩和を認めるものですが、その軽重や難易度は相当な差があります。

ノーベル賞やフィールズ賞など、かなりの難易度、希少性を要する受賞歴を必要とするもの、そこまで難易度を要求されずとも、具体的な受賞などの特別な業績を必要とするものがあります。

一方で、ある程度一般的な職歴を要求する程度のものまで含まれています。

そこで、比較的「我が国への貢献」の対象になる可能性がありそうな項目として、次のものを上げてみることとします。

  • (分野共通) 医療・教育などの職業について、日本社会・地域社会の維持・発展への多大な貢献・・・分野の限定もなく、具体的な達成項目もなく、この項目への該当性のアッピールは多くの方が可能と見られます。
  • (経済・産業分野) 上場企業などの日本企業の管理職などに5年以上勤務し、その間日本経済または産業の発展に貢献・・・経営者と異なり管理職として勤務される外国の方の数は相当に多いはずで、勤務年数は5年必要ですが、それ以外の具体的達成項目はありません。
  • (教育分野) 大学などの常勤この教授、准教授、または講師として、およそ3年以上勤務し、または勤務したことがあり、日本の高等教育水準向上への貢献・・・3年以上の常勤講師経験をお持ちの外国の方は少なくないはず、それ以外の具体的達成項目はありません。

まとめ

永住許可の審査は、行政裁量の色合いが濃く、継続在留期間をクリアしその他のガイドライン上の要件を満たしていると思っていても、必ずしも許可を得られる訳ではありません。

逆に、入国管理局がどこを積極的に評価してくれるのかもある意味千差万別です。アッピールできる点があれば、それらをアッピールすることにより、5年の継続在留期間での永住許可の取得も不可能ではありません。

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