エンターテインメントのビザを取るのは厳しい?「興行」ビザについて、解説します。

「興行」ビザとは、どんな人が対象?

「興行」ビザの対象の「興行」の態様は様々です。

テーマパークの運営会社と雇用契約を結んで従業員の立場でショーに参加する舞踏家、長期間日本に滞在して、興行主と興行契約を結んで継続的に演劇を披露する劇団、或いは、数回のコンサートのためだけに来日するロック・ミュージシャン、などなどです。

仕事と呼ぶのは、失礼な場合もあるかもしれません。入管法も、「興行」ビザで行える「活動」について、「本邦の公私の機関との契約に基づく」云々という限定をしていません。契約関係も複雑な場合も多く、日本国内の企業や団体と雇用契約を締結するというだけではないからです。

「興行」ビザの対象は、実際に「興行」に出演する方です。興行主として「興行」を運営する場合は、「経営・管理」ビザが必要となります。

興行=エンターテインメントの内容も様々です。入管法では、「演劇、演芸、演奏、スポーツなどの興行」と「その他の芸能」としています。

具体的に何が「興行」で何が「芸能」なのか?入管法の規定だけではすぐに理解するのは難しいですよね。

そこで、すこし先取りになりますが、「上陸許可基準」を見てみます。

上陸許可基準では、「芸能」活動の方については、4つに限定しています。「興行」ビザで行える「芸能」活動は次の4つだけなのです。

  1. 商品または事業の宣伝
  2. 放送番組(有線放送番組)または映画の製作
  3. 商業用写真の撮影
  4. 商業用のレコード、ビデオテープその他の記録媒体に録音または録画

「興行」の方について、上陸許可基準は、2つに分けて基準を定めています。次の2つです。

  1. 演劇、演芸、歌謡、舞踏、または演奏の興行
  2. その他の興行

1が、典型的或いは古典的な「興行」と言えるかもしれません。「人に直接見せることを目的として行われる娯楽」=興行のうちで古来からあるのは、「劇と芸と歌と踊りと音楽」ということなのでしょう。

入管法にも記されるスポーツは2の「その他」に入ります。因みにプロ・スポーツの選手は「興行」ビザの対象ですが、アマチュア・スポーツの選手は、「特定活動」ビザの対象となります。

実は、上陸許可基準では、演劇、演芸、歌謡、舞踏、または演奏の「古典的興行」は結構細かい基準を設けているのに対し、「その他の興行」や「芸能」については、それ程でないのです。

許可基準の内容について、次にご説明します。

許可基準は?

「古典的興行」=演劇、演芸、歌謡、舞踏、または演奏、「その他の興行」と「芸能」に分けて「上陸許可基準」を解説します。厳しくない順に説明します。

「その他の興行」

基準は次の通りです。

  1. 日本人と同等額以上の報酬を受け取ること

これだけです。「日本人と同等以上の報酬」は、就労ビザで一般的に要求される条件なので、事実上特別な条件はないということになります。

実際の申請手続においては、1つしか許可基準の項目がないにもかかわらず、それなりの数の書類を準備しなければなりません。「興行」の内容や仕事・活動の適正性を実質的に審査されるものと考えられます。

「芸能」

対象となる「芸能」は、4種類に限定されていることは上述の通りです。確認すると次の通りです。

  1. 商品または事業の宣伝
  2. 放送番組(有線放送番組)または映画の製作
  3. 商業用写真の撮影
  4. 商業用のレコード、ビデオテープその他の記録媒体に録音または録画

これら限定された「活動」についての、許可基準は次の通りです。

  1. 日本人と同等額以上の報酬を受け取ること

ここでも、これだけです。やはり、上の4つの「芸能活動」のビザには特段の条件はないのです。

「その他の興行」ほどではないですが、申請手続においては、それなりの書類を提出しなければなりません。

「古典的興行」・趣旨と例外

「古典的興行」には、細かい基準が定められていることは上述の通りです。

一方で、特定の「古典的興行」については、例外とされ、それに該当すれば、事実上「上陸許可基準」では、許可条件を付されていません。

実は、「古典的興行」の細かい許可基準の背景には、「興行」ビザを隠れ蓑にして、他の職業に就くことを目的に日本に入国する外国人を制限する政策的意図があるのです。

例外とされる場合は、他の職業の隠れ蓑での「興行」ビザの取得でないことが明白な場合に厳しい基準を適用されることを避けるためのものです。具体的には次の5つの場合です。

  1. 国または地方公共団体の機関、その他法律や法定の行為によって設立された法人が主催する「演劇、演芸、歌謡、舞踏、または演奏」の興行、或いは学校教育法の規定する学校、専修学校または各種学校で行われる「演劇、演芸、歌謡、舞踏、または演奏」の興行に出演する場合
  2. 日本と外国との文化交流の目的で国、地方公共団体、または独立行政法人の資金援助を受けて設立された日本の公私の機関が主催する「演劇、演芸、歌謡、舞踏、または演奏」の興行に出演する場合
  3. 外国の情景または文化をテーマとして観光客招致のため、常設の敷地面積10万㎡以上の施設において行われれる、外国人による「演劇、演芸、歌謡、舞踏、または演奏」の興行に出演する場合
  4. 客席での飲食物の有償提供、客の接待の何れも「禁止」の施設で、非営利の日本の公私の機関により運営されている、もしくは客席の定員が100人以上の施設での「演劇、演芸、歌謡、舞踏、または演奏」の興行に出演する場合
  5. 興行により得られる報酬の額(団体で行う場合は、その団体が受ける総額)が、1日50万円以上であり、かつ、15日を超えない期間日本に滞在して演劇、演芸、歌謡、舞踏、または演奏」の興行に出演する場合

1は、国、地方公共団体や公的機関が主催するか、学校で開催される「古典的興行」に出演する場合です。

2は、文化交流団体で公的資本が入っているものが主催する「古典的興行」に出演する場合はです。

3は、分かり易い言い方すれば、海外ブランドのテーマパークなどでの外国人主体のショーなどへの出演の場合です。敷地面積10万平米以上というのは、それなりの規模です。

1、2、3が厳しく審査されないのは、理解し易いところです。

4が、この例外規定の一番限界に近いところです。客席の飲食・接待禁止というのは、ナイトクラブやキャバレーなどでのショーに出演するものではない場合ということです。更に施設に公的運営もしくは客席100人以上という制限をかけることにより、ナイトクラブやキャバレーには当たらないが、場合によっては「風俗営業」に近くなる可能性のある私的な運営の小規模の劇場での興行ではないことも必要としているのです。

5は、相応の報酬を得て短期間でのみ興行を行う場合です。

以上から、逆に、「上陸許可基準」の細かい許可基準で審査されるのは、次に合致する場合です。

  • ナイト・クラブやキャバレーなどでの興行
  • 私的な小規模施設での興行
  • 短期ではなく、かつ高額の報酬ではない興行

とはいえ、「例外事項」に当たった場合に、「上陸許可基準」では要求あされる条件はないにもかかわらず、申請手続においては、相応の数の書類が必要です。「例外事項」に該当することの確認だけでなく、興行や施設、本人の仕事の内容の「適正性」も実質審査されるのです。

「古典的興行」の許可基準

上に述べました、例外に当たらない「古典的興行」に出演するための「興行」ビザの許可基準は、多くの項目に上ります。次の1から3の何れにも該当していることとされます。

1.出演する興行に関して、次の何れかに該当していること

(1) 外国の教育機関で、出演する興行に関する科目を2年以上の期間専攻したこと

(2) 2年以上の外国における出演する興行の経験を有すること

(3) 日本での興行で得られる報酬の額(団体で行う場合、その団体が受ける総額)が1日につき5百万円以上であること

2.次の何れの条件にも該当する日本の機関との月額20万円以上の報酬の支払義務をその機関が負うことが明示されている契約に基づいて興行に出演すること(主として外国の民族料理を提供する飲食店で、いわゆる風営法の規制する顧客接待を行うキャバレーなどに当たらない店を運営する機関と月額20万円以上の報酬を含む契約を締結して、その飲食店で料理と同じ外国の民族音楽に関する歌謡、舞踊または演奏の興行に出演するときは必要ありません。)

(1) 出演する興行に関して通算して3年以上の経験を有する経営者または管理者がいること

(2) 5名以上の常勤職員を雇用していること

(3) その機関の経営者または常勤職員が次の何れにも該当しないこと

(i) 人身取引などを実行、教唆、または幇助した者

(ii) 過去5年間に入管法の規定する「外国人の不法就労活動」に関する使役・支配管理・斡旋の何れかの行為を実行し、教唆し、または幇助した者

(iii) 過去5年間にその機関の事業活動に関して、外国人に対して不正に、入管法の上陸の手続に関する規定による証明書の交付、上陸許可の証印、上陸の許可、または在留・退去強制の規定による許可を受けさせる目的で、文書または図画を、偽造または変造し、虚偽の文書または図画を作成し、偽造またはは変造された文書または図画、虚偽の文書またはは図画を行使し、所持し、または提供し、あるいはこれらの行為を教唆し、またはこれを幇助した者

(iv) 入管法の規定する集団密航者に関する罪や不法入国などを容易にさせる行為などの罪など、または売春防止法の規定する売春の周旋、困惑等による売春、対償の収受等などの罪により刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

(v) いわゆる暴対法の規定する暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者

(4) 過去3年間に締結した同様の興行に関する契約に基づいて「興行」ビザをもって在留する外国人に対して支払義務を負う報酬の全額を支払っていること

3.出演する興行が行われる施設が次に何れにも適合すること、ただし、本人以外に「興行」ビザをもつ在留外国人がいない場合は(6)に適合すること

(1) 不特定かつ多数の客を対象として外国人による興行を行う施設であること

(2) 風営法の規定する客の接待を行うキャバレーなどである場合、次に何れのにも適合していること

(i) 専ら客の接待(風営法に規定する接待)を行う従業員が5名以上いること

(ii) 「興行」ビザをもつ在留外国人が客の接待を行うおそれがないと認められること

(3) 13㎡以上の舞台があること。

(4) 9㎡(出演者が5名を超える場合、9㎡に5名を超える人数の1名につき1.6㎡を加えた面積)以上の出演者用の控室があること

(5) その施設の従業員の数が5名以上であること

(6) その施設を運営する機関の経営者またはその施設に勤務する常勤職員が次の何れにも該当しないこと。

(i) 人身取引などを実行、教唆、または幇助した者

(ii) 過去5年間に入管法の規定する「外国人の不法就労活動」に関する使役・支配管理・斡旋の何れかの行為を実行し、教唆し、または幇助した者

(iii) 過去5年間にその機関の事業活動に関して、外国人に対して不正に、入管法の上陸の手続に関する規定による証明書の交付、上陸許可の証印、上陸の許可、または在留・退去強制の規定による許可を受けさせる目的で、文書または図画を、偽造または変造し、虚偽の文書または図画を作成し、偽造またはは変造された文書または図画、虚偽の文書またはは図画を行使し、所持し、または提供し、あるいはこれらの行為を教唆し、またはこれを幇助した者

(iv) 入管法の規定する集団密航者に関する罪や不法入国などを容易にさせる行為などの罪など、または売春防止法の規定する売春の周旋、困惑等による売春、対償の収受等などの罪により刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

(v) いわゆる暴対法の規定する暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者

必要書類もボリュームが必要です。

申請書に合わせて提出する書類も、「上陸許可基準」と同様に対象の「興行」「芸能」ごとに分けて規定されています。

「その他の興行」

  1. 経歴書・出演する興行に関する経歴を証明する文書
  2. 招聘機関の登記事項証明書・損益計算書の写し・従業員名簿
  3. 興行を行う施設の概要を明らかにする資料
  4. 招聘機関が興行を請け負つている場合、請負契約書の写し
  5. 出演する興行での仕事・活動の内容・期間・地位・報酬を証明する文書

「上陸許可基準」では、「日本人と同等額以上の報酬」条件だけなので、5だけでも良さそうなのですが、本人の経歴、契約相手の情報、施設の概要、興行請負契約の内容も確認しています。興行主、興行内容も確認し、実質的にはそれらの「適正性」も審査すると見てよいでしょう。

「芸能」

  1. 対象の「芸能」に関する業績を証する資料
  2. 対象の「芸能」に関する仕事の内容・期間・報酬を証明する文書

同じく、「上陸許可基準」では、「日本人と同等額以上の報酬」条件だけなので、2だけでも良さそうなのですが、本人の業績も確認しています。

「芸能」活動については、ビザの対象を、PR活動、映画やTV番組制作、写真撮影、コンテンツの録画・録音などに限っているので、「興行主」や「施設」の情報は不要なのでしょう。

「業績」を見るということは、例えば映画製作の「芸能」活動であれば、カンヌでパルム・ドールを取った「巨匠」でなくとも、相応の実績・経験がある映画監督の作品にはビザは出すが、アマチュア監督の作品ではビザはでないという様な実質審査は行われると見ることができるでしょう。

「古典的興行」の例外事項にあたる場合

  1. 経歴書・出演する興行に関する経歴を証明する文書
  2. 「上陸許可基準」にある要件をクリアした月額20万円以上の報酬の支払義務をその機関が負うことが明示されている興行の関する契約を結ぶ機関の登記事項証明書・損益計算書の写し・その他その機関の概要を疎明する資料
  3. 興行を行う施設の概要を疎明する資料
  4. 興行に関する契約書の写し
  5. 出演する興行に関する仕事・活動の内容・期間・地位・報酬を証明する文書
  6. 招聘機関の登記事項証明書・損益計算書の写し・その他招聘機関の概要を疎明する資料

「例外事項」に当たる場合、「上陸許可基準」に定める許可基準はないのですが、「例外事項」に該当する確認は必要であるので相応の書類は必要ではあります。とはいえ、提出書類は、本人の経歴、興行契約相手先の情報、施設、興行契約の内容、契約相手先の情報、本人の契約内容にまで及んでおり、「例外事項」の該当性だけでなく、出演する興行、興行に関する本人の仕事の内容の適正性についても、実質審査されるものと考えることができます。

「古典的興行」

  1. 経歴書及び活動に係る経歴を証する文書
  2. 「上陸許可基準」にある要件をクリアした月額20万円以上の報酬の支払義務をその機関が負うことが明示されている興行の関する契約を締結する機関の登記事項証明書・損益計算書の写し・その他その機関の概要を疎明する資料
  3. 興行を行う施設の概要を疎明する資料
  4. 興行に関する契約書の写し
  5. 出演する興行での本人の仕事・活動の内容、期間、地位及び報酬を証する文書
  6. 「上陸許可基準」にある要件をクリアした月額20万円以上の報酬の支払義務をその機関が負うことが明示されている興行の関する契約に基づいて興行行うときは、次の資料・・・(1)その機関の経営者と常勤職員の名簿 / (2)その機関の経営者と常勤職員が「上陸許可基準」に規定される、人身取引や「外国人の不法就労活動」その他入管法の規定する違法行為、犯罪行為への関与、売春禁止法上の犯罪行為、「暴力団員」でないことなどの除斥事由の何れにも該当しないことをその機関が申し立てる書面 / (3)その機関が過去3年間に締結した興行契約に基づいて「興行」ビザをもって在留する外国人に対する報酬の全額を支払っていることを証明する文書
  7. 「上陸許可基準」にある要件をクリアした施設を運営する機関の次の資料・・・(1)登記事項証明書・損益計算書の写し・その他のその機関の概要を疎明する資料 / (2)その機関の経営者とその施設に勤務する常勤職員の名簿 / (3)その機関の経営者とその施設に勤務する常勤職員が「上陸許可基準」に規定される、人身取引や「外国人の不法就労活動」その他入管法の規定する違法行為、犯罪行為への関与、売春禁止法上の犯罪行為、「暴力団員」でないことなどの除斥事由の何れにも該当しないことをその機関が申し立てる書面

本人の経歴、出演す興行に関する仕事・活動の内容、興行契約内容、施設の情報、興行契約相手先の情報、施設運営機関の情報に及ぶもので、上陸許可基準のクリアを確認するため必要な書類と言えます。

最後に

平成30年6月末時点で、「興行」ビザをもって、日本に住む外国の方の数は次の通りでした。

  • 「興行」ビザ保有者数・・・  2,275人(  0.3%)
  • 「芸術」ビザ保有者数・・・    447人(  0.1%)
  • 「宗教」ビザ保有者数・・・  4,361人(  0.6%)
  • 「報道」ビザ保有者数・・・    231人(  0.0%)
  • 就労ビザ保有者全体・・・ 684,181人(100.0%)

あまり、汎用性の高い就労ビザではないので、就労ビザ全体中ではわずかな数です。同じ様汎用性の高くないビザを比較して見ると極端に低い数字ではありません。

許可基準や申請に必要な書類などの厳しい条件の中での、この数字は需要が高いことを示すものとも言えます。

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