「技術・人文知識・国際業務」ビザとはどんなビザか?詳しく解説します。
「技術・人文知識・国際業務」ビザは、「就労ビザ」の中でも最もポピュラーなものとされます。どんな方に適したビザなのかを解説します。
どの様な仕事ができるのか?
「技術・人文知識・国際業務」ビザは、長い名称から、しばしば「技人国」ビザと略されます。以下でも、この略称で記述してまいります。
「技人国」ビザは、平成26年の入管法改正で、「技術」と「人文知識・国際業務」の2つのビザを1つにしてできた「就労ビザ」です。入管法の規定では、次の「活動」=仕事をすることを想定されたものです。
- 日本国内の公私の企業や団体との雇用契約その他の契約に基づく仕事・活動で、次の何れかの職業に就くこととされます。
- 理学・工学などの自然科学分野、または法律学・経済学・社会学などの人文科学の分野に属する技術もしくは知識を必要とする職業
- 外国の文化に基盤をもつ思考または感受性を必要とする職業
まず、このビザの対象者は、いずれかの企業・団体と雇用契約などを結んで仕事をすることが前提で、自営業者は対象ではありません。
1.の方から見ていきます。
大学で法律学をかじった者としては、法律学を人文科学と言われると違和感があります。ここで人文科学というのは、人文科学・社会科学の両者を指すと理解して下さい。例示された法律学・経済学・社会学は一般には社会科学に分類されますが、この他に一般に人文科学とされる哲学・歴史学・心理学・文学・語学なども対象です。
自然科学の方は、一般の認識通りです。理学・工学の他にも生物学・農学・医学・薬学なども対象です。
ということは、1.の対象は、一般に大学教育で人文・社会・自然科学の何れかに属する科目を専攻することにより修得される知識や技術を必要とする職業のことです。
通常、日本国内で大学卒業者を対象として求人募集が行われる様な仕事がこれにあたると言ってよいでしょう。
次に2.の方を見ていきます。こちらはやや難解です。
「外国の文化に基盤をもつ思考または感受性」では、どんな仕事か簡単には想像が付きません。そこで、少し先取りになってしまいますが、「上陸許可基準」の記述から具体的にどんな職業を対象とするかを見てみることで、どんな職業かを考えていきます。そこでは、次の職業が対象とされています。
翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、服飾や室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務
これらから具体的に想定される仕事は、およそ次の通りとなります。
- 外国の言語を必要とするもの(翻訳、通訳、語学の指導)
- 外国との取引に関するもの(広報、宣伝、海外取引業務)
- 外国特有の製品・商品を扱うもの(服飾や室内装飾に係るデザイン、商品開発)
許可基準・許可の条件は?
「技人国」ビザの許可を得るためにはどんな条件が必要なのでしょうか?就労ビザの大半の許可基準を示すとされる「上陸許可基準」では、上で示した仕事の区分に合わせて次の3つの何れをも充たすこととされています。
なお、3.の「日本人と同等以上の報酬」の条件は、就労ビザ全てに共通して要求される条件です。
1.人文・社会・自然科科学の何れかの分野に属する技術または知識を必要とする仕事に就く場合は、対象となる仕事が次の何れかに該当しており、かつその仕事に必要な技術または知識を修得していること(情報処理技術の特例は下述します。)
- 仕事に必要な技術または知識に関連する科目を専攻して大学を卒業したこと、またはこれと同等以上の教育を受けたこと。
- 仕事に必要な技術または知識に関連する科目を専攻して日本の専修学校の専門課程を修了し、専門士または高度専門士の学位を取得したこと
- その仕事について10年以上の実務経験をもつこと(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程または専修学校の専門課程で、仕事に必要な技術または知識に関連する科目を専攻した期間を含めて計算できます。)
2.外国の文化に基盤をもつ思考または感受性を必要とする仕事に就く場合は、次の何れにも該当していること
- 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝または海外取引業務、服飾または室内装飾に関するデザイン、商品開発その他類似する仕事に就くこと
- 対象の仕事について3年以上の実務経験をもつこと、但し、大学を卒業した者が翻訳、通訳または語学の指導に関する仕事に就く場合は、その必要はありません。
3.日本人が受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること
どんな人が、「技人国」ビザを取得できるのか?
まず、1の「人文・社会・自然科科学の何れかに属する技術または知識を必要とする仕事」に就く場合、大卒もしくは、または日本の専修学校の専門課程を修了し、専門士または高度専門士の学位を取得していれば、条件は次の1つです。
- 対象の仕事に必要とされる知識または技能を大学または日本の専修学校で専攻したこと。
従って、大卒のキャリアをもつ外国の方が、必要な知識や技能が大学で専攻した科目と一般的に関連する仕事に就く場合には、そのことで許可の基準を充たすことができるとされています。
このことは、2の「外国の文化に基盤をもつ思考または感受性を必要とする仕事」に就く場合も、「翻訳、通訳、または語学の指導」については同様のことが言えます。
大卒の場合、「翻訳、通訳、または語学の指導」については、実務経験を要求されないので、条件は次の1つです。
- 対象の「翻訳、通訳、または語学の指導」の仕事が、「外国の文化に基盤をもつ思考または感受性を必要とする仕事」であること
従って、大卒のキャリアをもつ外国の方が、母国語を対象とする「翻訳、通訳、または語学の指導」仕事に就く場合には、そのことで許可の基準を充たすことができるのです。
「技人国」ビザをもつ方は、典型的には、母国の大学、もしくは留学生として日本の大学を卒業している方が、その専攻科目と関連する職業もしくは母国語の翻訳、通訳または語学指導の職業の何れかを得て、ビザの許可を取得しているということができるでしょう。
もちろん、大卒でなくとも、実務経験に基づく「技人国」ビザに取得は可能です。特に「外国の文化に基盤をもつ思考または感受性を必要とする仕事」であれば、実務経験は3年以上とされ、相対的に短い期間が条件です。
特例的にビザが取得できる場合
「技人国」ビザの許可基準については、次の特例が認められています。
「国際仲裁事件」の外国弁護士
国際仲裁事件の外国弁護士(日本国内で外国法に関する法律問題を扱う「外国法事務弁護士」とは異なります。)が、日本国内のいずれかの企業・団体と雇用契約などを結んで仕事をする場合、「技人国」ビザが必要です。
その場合の許可基準として、「上陸許可基準」に列挙された要件を充たすことは必要がないとされています。(もちろん許可は必要で、申請が虚偽でないことなどの審査は必要です。)
なお、日本国内のいずれかの企業・団体と雇用契約などを結びことなく、国際仲裁事件の外国弁護士として仕事をする場合は、「特定活動告示」で指定された「特定活動」ビザが必要となります。
情報処理技術を必要とする場合
「人文・社会・自然科科学の何れか分野に属する技術または知識を必要とする仕事」に就く場合で、情報処理技術を必要とする仕事に就くときは、法務省が告示で定める試験に合格しているか、同じく法務省が告示で定める資格をもつことで足りるとされ、大卒などの学歴要件や実務経験に関する職歴要件を充たすことは必要とされません。
法務省告示で指定される試験は、日本国内で経済産業大臣が実施する試験の他、中国、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、台湾、マレーシア、タイ、モンゴル、バングラデシュで行われるものまで数多くが指定されています。
指定される資格は、シンガポールと韓国のものです。
なお、インドにおけるドアック(DOEACC)制度に基づく認定については、上記の法務省告示で指定されていませんが、「大学卒業と同等以上の教育を受けたこと」として、大卒に準じて取り扱われるものとされます。
「技人国」の申請には何が必要か?
「技人国」ビザの申請書には、次の書類を添付することが必要とされています。
- 雇用先企業などの登記事項証明書と損益計算書の写し
- 雇用先企業などの事業内容を明らかにする資料
- 卒業証明書または仕事に関連する科目を専攻した期間の証明書と職歴を証する文書
- 仕事の内容、期間、地位と報酬を証明する文書
1と2は、雇用先が準備してくれる書類です。(損益計算書以外は当事務所で準備作成いたします。)
3は、申請される方が準備する書類です。(日本語訳については、当事務所で準備いたします。)
4については、雇用契約やオファーシートの写しを準備すればよいでしょう。
まとめ
「技人国」ビザをもつ在留外国人の数は、平成30年6月末で、21万人以上になります。この数字は、就労ビザの中では、「技能実習」ビザの28万人以上に次いで多いものです。
「技能実習」ビザが非熟練就労者を対象とする唯一のものとして、非熟練就労者が集中していることに対して、大卒以上の専門性や熟練度の高い労働者を対象とする就労ビザの中心的なものとして多くの方がその取得を指向するビザであると考えます。
平成26年末からの3年半の間で、その数は7割以上増加しており、これは在留外国人全体の増加率を越えるものでした。
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